依頼していた着物、ずいぶん前に「仕上がりましたよ」とご連絡を頂いていたのに、
すっかり甘えて今日受け取りに伺った。
本日はSさん同行。彼は子供の頃、近所の同級生が全員女の子と言う
環境で育ったそうで、小学校時代はおままごとの要員として、
重宝にされていたらしい。なので、女性ばかりの集まりとかにも
物怖じせずにやってきて、なんとなくみんなの話に笑顔で
聞き入っていたりする、不思議と男性がその場にいることを
忘れさせてくれる存在である。
だが!中身はやっぱり男性。初めて会ったとき、友人が着物を着ているのを見て、
彼女が「なんだーannちゃん、今日も着物だと思ったのに~」との発言に敏感に反応。
男性って、良く聞くと着物姿の女性が好きって方が意外と多いんですよね。
「annさん、着物着るんですか?!」「え?着るよ」「自分でですか?」
「へたくそだけれど自分で着るよ」「今度着てきてください!!!」
それ以来、着物に興味を示す示す。着物やさんのウインドウの前で
立ち止まろうものなら、「入る?」「買う?」攻撃。
うっかり知らないお店でポーンと着物を買えちゃうほど、裕福じゃないから。。。(--;)
しかも良く調べたら「田中絹代さんのお着物を扱っていらっしゃった老舗」だった・・・
それから暫くして、彼のお母様が踊りをやってらっしゃって、海外公演にも
行かれると言う、着物のヘビーユーザーと知る。
「ちょっとー、あたしの着物姿見て笑ってたんじゃないのぉ?」
「へたくそとか思ってたんじゃないの?」ちょっとむっとしたが、
本人どこ吹く風。「母親の着物姿なんてまじまじと見ないよ」と一言で切り捨てた。
たった一度、朱赤の麻の葉の模様の綿紬を着たときに、昔の円筒形のポストの横で
無理やり写真を撮って「姉妹」と言うタイトルをつけた事だけは、未だにしつこく
根に持ってるからね(笑)
さて本題。
私が「だるまやさん」と呼んでいるお店は正確には「だるまや京染本店」と言い、
平塚市明石町5-7にある創業百余年と言う老舗のお店である。
電話番号も書いちゃお(許可済み)。0463-21-1411です。
ご主人が優しい方で、まったくの素人の私に、持ち込んだ着物の種類、
扱い方、どれがいい物なのか、教えてくださる。
どう洗ったらいいかもアドバイスを下さるので(決めるのはあくまで持ち込んだ本人)、
納得の上、自分の着物のメンテナンスをお願いできる。
そして、なにより洗い張りの時には「化学糊」ではなく「天然のふのり」を
つかって仕上げてくださること。きっと手間も時間も掛かるのだろうけれど、
かたくなにその手法を貫いていらっしゃる。
以前、「気に入った着物を洗いに出して出来上がりに納得できなかった」と言う
噂を耳にしてから、洗い張りなどに出すときはどこがいいか、ずっとリサーチしていた。
そして、鎌倉のリサイクル着物や「雪月花」さんで、
「リーズナブルで、上手なところはありますか?」とずうずうしくも尋ねた。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」と子供の頃から教わってきた私は、
その時「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の損」と勇気を出した(笑)。
そして、教えていただいたのが「だるまやさん」だった。
初めての「だるまやさん」は平塚で迷子になって、お店に電話した私に
解りやすく道順を教えてくださって、お店の前で手を振って待っていて下さった
ご主人の優しい笑顔に張り詰めていた上、迷子で不安だった気持ちがすこし
楽になった。ご主人には迷子は初めてだよと笑われてしまったけれど。
そして、着物を作る気になったときのために、サイズまで測っていただいた。
ご主人に「着物着せやすい体型だなぁ~」とのお褒めの言葉を頂き
(ご主人はうっかり口走ってしまった本当のことに、しきりに謝って
いらっしゃいましたが、私にとっては最高の褒め言葉でした)。
それ以来、私にとってはお着物のメンテナンスは「だるまやさん」と決めている。
もっとも、横浜から引っ越して、東京都に入るために一つ川を越え、
東京都を突っ切って、多摩川を越えの長旅になるのだが、
それも楽しみの一つ(お店にとっては、もっと早く持ってくれば
しみにならずに済んだのに。。。と思われることも有るでしょう)。
自分の着物を風呂敷で包み、抱きかかえて電車の旅は、着物とのスキンシップと
「綺麗にしてもらってね。」の儀式のようなものだ。
今回は裄出しをお願いするために洗い張りした白大島(本当は白大島って
だるまやさんに仰っていただくまで、信じていなかった。。。ごめんなさい)。
京洗いの袷、単、夏着物の受け取りである。
最初迷子になったとは思えないほど道順にも慣れ、目指す「だるまやさん」へ。
暖簾をくぐると。。。(・・)
え?ご主人と「若い男性」(ご主人もおそらく私よりちょっとお兄さんくらいなのでしょうが)、
若い男性?しかも好青年。緊張するじゃない(笑)。
でも、すぐ思い出した。私と同業の甥っ子さんがいらっしゃると、
先日ご主人が仰っていたので、土曜日だしお手伝いかな?と。
よく伺ったら、会社をお辞めになって「だるまやさん」で修行中とか。
おおー、伝統の技をこれからも残してくださる、跡継ぎの方が
出来たのですね。伺って私も嬉しくなった。
このお店の技は、これからも続いてゆくと。伝統の技は消えてしまうことが多くて、
どの職人さんに伺っても「後継者不足ですよ」と返ってくるけれど、
「だるまやさん」は残ってくださる。しかも人当たりのよい好青年。
もう少しマメに通おうっかな。。。(ご主人ごめんなさい!!!)
ああー次に行ったら、ご主人が質問に答えてくれなかったらどうしよう(本気)。
イロンナ本を読んでも、夏の雨コートなんて、殆ど書いてない。
リサイクル着物やさんに行っても、見かけない。
着物やさんにお勤めだったお友達に聞いても、安物の絽とかの反物を
雨コートに仕立てて、防水スプレーかけまくって着てるよ。
そこで初めて、夏の雨コートの素材が本当はあることがわかる。
「だるまやさん」で聞いてみよう。メモメモ。これはだるまやさんにて解決。
そして、折角裄だししていただいた着物に、うそつきのポリエステルの
袖の短い襦袢ではかっこよくない。
昔、樋口可南子さんが、京都のおばんざいを教わると言う
特集を番組で見たとき、樋口さんが「京都のおばんざいだから
京野菜の襦袢を着てみました」と袖口から見せた
聖護院鏑の柄や京人参の柄。衝撃を受けた。そうよね。本当のおしゃれは
きっと襦袢なんだ(影響されやすい)。
それに折角「だるまやさん」があなたの持っている着物でもいいものだよと
教えてくださったのだ。いい物にはやはりそれなりの襦袢をあつらえてあげたい。
そう!annはじめての襦袢お誂え。ああ・・・幸せ。
やっぱりお誂えにはまりそう。。。(いやいや、貧乏人は一生懸命働いて、
頑張ったご褒美に)。
そして、ただ、ぼそぼそ質問を間に挟むSさんに浴衣をお勧め。
どうも、普段はセールス得意なんだけれど、Sさんには通じない。
いや、絶対作らせてやる(固い決心)。私をポスト呼ばわりしたんだから、
自分で浴衣くらい着ていただこう。
そして、次回お伺いしたときに工場見学をお願いすると
「今大丈夫だよ」との心強いお返事。
「え?いいんですか?」とか言いながら、ずうずうしく工場に入り込む。
目の前にバーンと出てきた緑の生地。糊付けのあとの干している段階らしい。
羽織を色換えして、帯に作り直すのだそうだ。
弓なりの竹ひごの両先に針の付いたもので
幅が一定になるように布をぴんと張ってゆく作業です。
ご主人が口頭で説明をしてから、実際の作業を見せてくださる。
え、?よく見ても、何が起こっているのか解らないんですけれど。。。
下から眺めて、やっと理解。(^^)
ann挑戦させていただきました。不器用を「だるまやさん」でご披露しました。
裏から見るとこんな感じになります。
竹のまっすぐになろうとする力を利用して
布をぴんと張るのです。今回のこの生地は
少し厚手で、しっかりしているので間隔は少し広めでいいそうです。
胴裏などの薄い生地はこんな感じで細かい間隔で
竹を張ってゆきます。
天井に近い場所につるして干してあるのを下から撮影。
どの生地も、ふのりの糊を使って仕上げてあるそうです。
工場見学の方は、必ず予約してくださいね。私はたまたま運よく拝見させていただけましたが、
本当に偶々ですからね。
業務連絡、
ご主人の作業の説明をしている写真があるのですが、ブログにお顔だしてしまってよろしいでしょうか?
許可を頂きましたので、写真を1枚増やし、説明を加筆しました。
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